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委任状における顕名
前回までに、代理方式と代行方式を見てきました。代理方式は、代理人乙が本人甲の名前を明らかにしたうえで行為をするものであり、代行方式は、代理人乙が自分の名前を明かさず本人甲として行為を行うものでした。
このページでは、まず前者の代理方式を詳しく見ていきたいと思います。この代理方式は、安全な通常の委任関係であり、私たちが委任状を作成するにあたって取るべき方式ですので、しっかりと注意してみてください。
この代理方式には、顕名が必要です。顕名とは、文字通り、本人の名を顕らかにして、代理人が本人のために行為を行うことです。つまり、「甲の代理人である乙」というふうに、委任状に明確に委任関係を署名することが顕名行為なのです。
この顕名がないと、トラブルに発展するおそれがありますので、顕名を忘れないようにすることがまず最初の重要点となります。誰かに委任するときは、その者が、「自分の代理人である○○」というふうに、必ず委任状に記載するのです。
もし、このような顕名行為がなかったならばどうでしょう? 顕名行為が間違っていたらどうでしょう?
たとえば、代理人の乙が、相手方丙との間で売買契約をしたとき、うっかりして、契約書に、「甲代理人乙」ではなく「乙」とだけ署名したとします。この場合、原則として、その契約は代理人乙が自分のために行なったものと見なされてしまうのです。すなわち、委任したのは甲である私たちなのに、契約自体は、代理人乙と相手方丙とのあいだの契約となり、そこに甲である私たちはまったく関与していないことになるのです。これは、私たちにとっては無意味であるとともに、悪用される危険が伴うものです。
そのため、委任状には、必ず「甲代理人乙」という顕名をしっかりと行い、まずはこの顕名に注意を怠らないようにしてください。委任状のトラブルにおいては、うっかりミスとか、うっかり忘れていたことで、後で法的に大変な責任を負わなければならなくなったケースが毎日数多く見られていますので、委任状を作成する際の注意深さに注意深すぎるということはありません。何度も何度も記載事項を確認してみてください。
では、次のページで、委任状には実際、何を記載すべきなのかどうかを見ていくことにします。